メディア実績を構築したいけれど、なかなか思うように取り上げられない…そんな悩みを抱えていませんか?私も以前PR会社でクライアント企業を担当していた頃は、「どうすれば効果的にメディア露出を増やせるのか」と頭を悩ませる日々でした。
実は日本の企業広報担当者の約7割が「メディアへの効果的なアプローチ方法がわからない」と回答しているという調査結果があります。この数字を見て、「私だけじゃないんだ」と少し安心したのを覚えています。
でも、悩んでいるだけでは状況は変わりません。私自身、ある化粧品メーカーの広報担当時代に「なぜ我が社のリリースはいつも無視されるのか」と途方に暮れていました。そこから試行錯誤を重ね、記者との関係構築や情報発信の方法を根本から見直したことで、半年後には月間メディア掲載数が3倍に増えた経験があります。
本記事では、メディア実績をゼロから構築するための戦略立案から具体的な実施手順、さらには成果測定まで、私が実務で培ってきたノウハウをお伝えします。PR予算が限られた中小企業やスタートアップでも実践できる、費用対効果の高いアプローチ法に焦点を当てています。
「どの媒体にアプローチすべきか」「記者にどう接触すればいいのか」「プレスリリースの書き方のコツは?」など、PR担当者が抱える実践的な疑問に答えながら、あなたのビジネスに合った実績構築の方法を見つけていきましょう。
この記事を最後まで読むことで、メディアから注目される企業になるための具体的なロードマップが手に入ります。さっそく一緒に、効果的なメディア実績構築の方法を見ていきましょう!
メディア実績構築の基本戦略
「メディア実績を増やしたい!」と思っても、具体的に何から手をつければいいのか分からず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。私も化粧品会社の広報担当になったばかりの頃は、毎日プレスリリースを送っても全く取り上げられず、途方に暮れていました。
実は、メディア実績を構築するには、闇雲に情報を発信するだけでは不十分なんです。戦略的なアプローチと地道な関係構築が欠かせません。今回は私が10年以上のPR実務で培った経験から、効果的なメディア実績構築の基本戦略についてお伝えします。
まずは自社の「メディア価値」を見極める
メディア実績構築の第一歩は、自社の何がメディアにとって価値があるのかを客観的に分析することです。私が以前、広報担当をしていた化粧品会社では、最初は新商品の発売情報ばかりを発信していましたが、まったく反応がありませんでした。
ある日、社内の研究者が学会で発表した美容成分の研究結果をプレスリリースにしたところ、複数の美容専門メディアから問い合わせが!この経験から学んだのは、「メディアが求めているのは新商品の情報ではなく、読者に価値ある知見や情報だった」ということです。
自社の強みを客観的に分析するには、以下のポイントを確認すると良いでしょう:
- 業界内での独自性や先進性
- データや研究に基づいた専門知識
- 社会課題解決につながるストーリー
- トレンドとの関連性
- 経営者や従業員の個性的な背景
これらを整理することで、メディアが興味を持ちそうなポイントが見えてきます。どれも該当しないと思っても、角度を変えれば価値あるストーリーになることも多いんですよ。
ターゲットメディアの選定と研究
「とにかく大手メディアに載りたい!」と思いがちですが、実は企業規模や業界によって、最適なメディアは異なります。効果的なメディア実績構築には、自社に合ったメディアを選ぶことが重要です。
私の失敗談をひとつ。以前担当した中小企業では、有名経済誌への掲載を目指して何度もアプローチしましたが、まったく相手にされませんでした。ところが、業界専門誌に方向転換したところ、すぐに取材が決まり、その後も継続的な掲載につながったんです。
ターゲットメディア選定のステップは以下の通りです:
- 自社の顧客がよく読むメディアをリストアップ
- 競合他社がどのメディアに掲載されているかチェック
- 各メディアの読者層、発行部数/PV数、編集方針を調査
- 過去の記事内容を分析し、自社との親和性を評価
- 取材可能性の高いメディアから優先順位をつける
特に重要なのは、各メディアがどんな記事を好む傾向があるのかを研究することです。例えば、あるビジネス誌では成功事例を好み、別の業界誌では課題解決型の情報を求めているなど、編集方針は様々です。
「でも、どうやってメディアの傾向を調べればいいの?」と思う方もいるでしょう。実は簡単です。過去3ヶ月分の記事を読み、どんなテーマが多いか、どんな切り口で書かれているかをメモしてみてください。これだけでも、そのメディアの好みがかなり見えてきますよ。
ニュース価値を高める工夫
メディアに取り上げられるには、「ニュース価値」が不可欠です。ですが、多くの企業が「うちには特別なニュースがない…」と悩んでいます。
私も中小企業のPR担当として苦労した経験があります。新商品も大きな実績もない中で、どうやってメディアの目を引くか…。そこで編み出したのが「データの活用」と「トレンドとの接続」という方法でした。
例えば、自社商品の利用者100人にアンケートを取り、「〇〇に関する実態調査」としてデータをまとめました。さらに当時話題だった社会問題と絡めた考察を加えたところ、複数のウェブメディアで取り上げられたんです。
ニュース価値を高める具体的な方法として、以下のアプローチが効果的です:
- 独自調査の実施: 小規模でもよいので、自社の専門分野に関連した調査を行う
- 時事問題との関連づけ: 現在の社会課題や流行と自社の活動を結びつける
- 数値化・可視化: 抽象的な情報を具体的な数字やグラフで示す
- 意外性の創出: 常識を覆すような発見や取り組みをアピール
- ストーリー性の構築: 単なる事実の羅列ではなく、物語として伝える
中でも特に効果的だったのは「意外性」です。「〇〇と思われがちだが、実は△△だった」という構図は、記者の興味を引きやすいんですよ。私の経験では、業界の常識を覆すような小さな発見でも、意外性があればニュースになることが多かったです。
情報発信の年間計画を立てる
多くの企業が陥りがちなのが「ニュースがあるときだけ発信する」という姿勢。これではメディアとの関係構築が難しく、持続的な露出は望めません。
効果的なメディア実績構築には、計画的な情報発信が欠かせません。私が担当していた企業では、年間の情報発信計画を立てることで、メディア露出が約2倍に増えた実績があります。
年間計画の立て方としては:
- 確定している企業イベント・新製品発表を暦に落とし込む
- 業界の定例イベントや季節トレンドをマッピング
- 1-2を踏まえて、各四半期に1-2回のプレスリリース発信を計画
- 大きなニュースがない月は、小ネタや調査結果の発表を入れる
- 計画は柔軟に調整しながら運用する
例えば、化粧品会社なら春と秋の新製品発表に加え、夏前には日焼け対策の調査結果、冬には乾燥肌対策のアドバイスなど、季節に合わせた情報を計画的に発信すると効果的です。
「でも、そんなに情報発信するネタがない…」と悩む方もいるでしょう。実はネタは意外とあるものです。社内会議や日常会話の中から「これって意外と知られていないかも?」という小さな気づきをメモしておくと、後々役立つことが多いですよ。私はスマホのメモアプリに「PR種」というフォルダを作り、日々の気づきを記録していました。
メディア実績を広げるためのステップアップ戦略
メディア実績を構築する上で意識したいのが「ステップアップ戦略」です。いきなり全国紙や人気テレビ番組に取り上げられることは難しいですが、段階的にメディア実績を積み上げることは可能です。
私がPR会社時代に支援した中小企業の事例では、まず業界専門誌→地方紙→ウェブメディア→全国紙という流れで約1年かけてメディア実績を構築しました。最初の掲載事例ができると、次のメディアへのアプローチが格段に容易になるんです。
効果的なステップアップ戦略としては:
- まずは取材ハードルが低い業界専門メディアや地域メディアから始める
- 掲載された記事はPDFで保存し、次のメディアへのアプローチ時に実績として提示
- オンラインメディアへの掲載を足がかりに、紙メディアへステップアップ
- 似たテーマで複数のメディアに掲載されると「話題性」が生まれ、さらなる取材につながる
- 記者との関係が構築できたら、次回はより大きな企画を提案する
この戦略で特に重要なのが「最初の一歩」です。どんな小さなメディアでも、掲載実績ができると社内のPRに対する理解も深まり、次のステップに進みやすくなります。
私の経験では、地方新聞の経済面に小さく掲載された記事をきっかけに、業界誌の記者から「詳しく話を聞きたい」という連絡が来たことがありました。メディアは他のメディアの動向を常にチェックしているんですね。
戦略的なプレスリリース活用
プレスリリースは企業とメディアをつなぐ重要な架け橋です。私が広報担当として初めてプレスリリースを作成したとき、その重要性を甘く見ていました。「情報を伝えればメディアは取り上げてくれるはず」と考えていたのです。結果は惨憺たるもので、一通の問い合わせもありませんでした。
数々の失敗と試行錯誤を経て、プレスリリースには「戦略」が必要だということを学びました。今回は私の経験と多くの企業の成功事例から、戦略的なプレスリリース活用法についてご紹介します。
メディアの興味を引くプレスリリースの作成技法
メディアが日々受け取るプレスリリースは膨大な数にのぼります。中には一日100件以上のプレスリリースを確認する記者もいるのです。この情報の洪水の中で、あなたのプレスリリースが埋もれないためには、記者の琴線に触れる「フック」が不可欠です。
私が化粧品会社の広報担当時代に行った失敗から学んだことですが、「当社の新商品が発売されます」という企業視点のリリースは、ほとんど響きません。代わりに「40代女性の87%が抱える○○の悩みを解決する新発想」というように、社会的課題や読者のニーズと結びつけることが重要です。
効果的なプレスリリースの構造は以下のようになります:
- 衝撃的な見出し:最初の3秒で興味を引く
- 社会的意義:なぜ今、この話題が重要なのか
- 具体的データ:信頼性を高める数字や調査結果
- 人間的なストーリー:感情に訴える実例
- 簡潔な企業情報:必要最小限にとどめる
ある中小企業のケースでは、「地方発のハンドメイド商品」という切り口ではなく、「職人技術の継承問題に挑む若手女性起業家」というストーリーに焦点を当てたところ、地方紙のみならず全国紙にも掲載されました。このように、「誰にとっての価値か」を常に意識することがポイントです。
また、プレスリリースの長さも重要です。記者は忙しいため、A4用紙1〜2枚に収まる量(1,200文字程度)が理想的です。多くの情報を詰め込みたい気持ちはわかりますが、詳細情報は添付資料や参考URLとして提供し、本文はシンプルに保ちましょう。
プレスリリース配信のタイミングと効果的な発信方法
タイミングは戦略の重要な要素です。これまで多くのプレスリリースを配信してきた経験から、いくつかの鉄則をお伝えします。
まず、週の前半(月・火曜日)の午前中が最も開封率が高いとされています。PR会社時代の私のクライアントデータでも、月曜の10時前後に配信したリリースの問い合わせ率が約30%高かったです。ただし、業界によって例外もあります。例えば、エンタメ系のニュースは週末前の木曜日が効果的なケースもありました。
また、配信方法にもコツがあります。大きく分けて以下の3つの方法があります:
- プレスリリース配信サービスの活用
- 自社メディアリストへの直接配信
- 記者クラブへの投げ込み
配信サービス(PR TIMESやValuePress!など)は手軽で広範囲にリリースを届けられますが、記者の個人メールよりも開封率が下がる傾向があります。一方、自社で構築したメディアリストへの配信は、記者との関係構築にもつながる効果的な方法です。
私が実践している方法は、まず核となる5〜10社の記者には個別メールで事前に案内し、その後配信サービスで広く発信するというハイブリッドアプローチです。あるベンチャー企業では、この方法で従来の3倍のメディア掲載率を達成しました。
配信時の件名も重要なポイントです。「プレスリリース:会社名+内容」という形式は避け、「【データ】68%の20代が直面する○○問題の実態調査」のように、記者が思わず開きたくなる工夫をしましょう。
継続的な情報発信による信頼関係構築のポイント
単発のプレスリリースで終わらせるのではなく、継続的な情報発信こそがメディアとの信頼関係を育む秘訣です。私がPR会社でクライアントを担当していた時、「ニュースがないから出せない」と考えていたクライアントに、ニュース価値の見つけ方から提案しました。
例えば、以下のような情報も価値あるプレスリリースになり得ます:
- 業界動向に関する自社調査結果
- 経営者による専門的な見解
- 社内の小さな取り組みや改善事例
- 季節やトレンドに合わせたTips
年間の情報発信カレンダーを作成し、最低でも四半期に1回はリリースを出すことをおすすめします。その際、毎回異なる切り口で展開することで、企業の多面的な魅力が伝わります。
ある食品メーカーでは、新商品発表だけでなく、「夏バテ防止の栄養学的アドバイス」「地域の食材調達における課題」「食品ロス削減への取り組み」など、様々な角度からリリースを展開。結果として、商品紹介だけでなく、専門家としての信頼性を獲得し、記者からの取材依頼が増加しました。
継続性を保つためのコツとして、社内の「リリースネタ収集システム」を構築することをお勧めします。各部署から月1回、「こんなことがありました」程度の簡単な情報を集めるだけでも、思わぬニュース素材が見つかることがあります。
また、一度取り上げてくれた記者には、記事掲載後に丁寧にお礼のメールを送り、次回の情報提供を約束することで、関係性を深めることができます。この小さな積み重ねが、後々大きなメディア実績につながるのです。
さらに、プレスリリースを発信した後のフォローアップも重要です。配信から2〜3日後に、主要メディアに「何か質問があればお答えします」と丁寧にフォローメールを送ることで、埋もれていたリリースが注目されることもあります。ただし、しつこく催促するような印象は避けるよう注意しましょう。
プレスリリースは単なる情報伝達ツールではなく、企業のブランディングや価値観を伝える重要なコミュニケーション手段です。戦略的に活用することで、メディアとの継続的な関係構築だけでなく、企業の認知度向上やブランド価値の確立にもつながります。
次回は「記者との効果的な関係構築」について詳しく解説します。プレスリリースの先にある、より深いメディアリレーションの築き方をお楽しみに!
記者との効果的な関係構築
メディアに取り上げられるために最も重要なのは、実は記者との良好な関係構築です。PRの現場で10年以上働いてきた私自身、最初は記者とのコミュニケーションに苦労しました。「どう接すれば良いのか」「押しが強すぎないか」と悩む日々…。でも、試行錯誤の末に見えてきた”記者との関係づくり”のコツをお伝えします。
記者は「情報のプロ」であることを理解する
記者の方々は日々膨大な情報に触れ、価値ある情報を選別するプロフェッショナルです。私が新人PR担当だった頃、ある業界紙の記者に「毎日100件以上のプレスリリースが来るんだよ」と言われて驚いたことがあります。一人の記者がそれだけの情報の中から価値あるものを選び出しているのです。
この現実を理解すると、なぜ自社の情報がピックアップされないのか、どうすれば目に留めてもらえるのかが見えてきます。記者は「読者にとって価値ある情報」を求めています。単なる自社製品のPRではなく、「なぜそれが読者・社会にとって重要なのか」という視点を持つことが大切です。
最初の接触は慎重に、でも臆病になり過ぎないこと
記者との最初の接触は、多くのPR担当者が緊張するポイントですよね。私も初めて大手経済紙の記者に電話した時は、手が震えて原稿が読めないほどでした(笑)。でも、実は記者の方々は新しい情報源を常に求めています。
良い最初の接触方法としては:
- メールでの簡潔な自己紹介:長文は避け、自社の事業と提供できる情報の価値を3行程度で伝える
- イベントでの名刺交換:業界イベントや記者会見は記者と自然に会話できる貴重な機会
- 共通の知人を通じた紹介:可能であれば、すでに関係のある方からの紹介が最もスムーズ
実際、私が担当したスタートアップ企業では、いきなり大手メディアへのアプローチは避け、まず業界専門メディアの記者との関係構築から始めました。専門性の高い話題で信頼関係を築いた後、その実績を基に大手メディアへアプローチすると、受け入れられやすくなることが多いんです。
記者が求める「良い情報源」になる
記者との継続的な関係を築くためには、自分が「良い情報源」になることが重要です。これは必ずしも自社の情報だけを提供するということではありません。
あるIT記者との関係で、私が業界の最新動向や競合他社の動きについて(公開情報の範囲で)情報交換をしていたことがありました。そのうち、記者から「業界のことをよく知っているから話していて勉強になる」と言われるようになり、取材の機会も増えたんです。
良い情報源になるためのポイント:
- 業界動向に精通する:自社の枠を超えて業界全体の知識を持つ
- タイムリーな情報提供:ニュース性のあるタイミングで情報を届ける
- 独自の視点を持つ:データや分析に基づく独自の見解を提供する
- 記者の専門分野を理解する:各記者の興味・専門領域を把握し、関連情報を届ける
- 情報の信頼性を担保する:不確かな情報は伝えない、事実確認を徹底する
特に5つ目の「信頼性」は絶対に譲れない部分です。一度でも不確かな情報を提供してしまうと、信頼回復には何倍もの時間がかかります。私自身、確認不足の情報を提供してしまい、関係修復に半年以上かかった苦い経験があります。
取材依頼から記事化までのプロセス管理
記者からの取材依頼や、こちらから取材を依頼する場合のプロセス管理も重要です。ここでの対応が記者の印象に大きく影響します。
記者からの取材依頼への対応
- スピード感を持った返答:可能な限り当日中、遅くとも24時間以内に返信する
- 必要情報の整理:取材目的、掲載媒体、掲載時期、取材希望者などを明確に把握
- 社内調整の徹底:インタビュイーのスケジュール確保と事前準備
- 取材当日のサポート:資料準備、進行管理、追加情報の提供
- 掲載後のフォローアップ:掲載記事への感謝と関係維持
私が担当したある取材では、急なインタビュー依頼に対して社長のスケジュールを無理やり空けたことがありました。その迅速な対応が評価され、予定よりも大きな記事になったケースもあります。逆に「社内調整に時間がかかる」と思われると、次回の取材機会が減ることも…。
こちらから記者へ取材を依頼する場合
- ニュース性の精査:本当に記事価値があるか客観的に判断する
- 記者の選定:テーマに最適な記者を選ぶ(過去の執筆記事などから判断)
- 簡潔な依頼メール:要点を押さえた3〜5行程度の本文と詳細資料の添付
- 適切なフォローアップ:1週間程度空けて電話やメールで確認(しつこくない程度に)
- 断られても関係維持:今回取り上げられなくても丁寧に対応
「しつこすぎないフォローアップ」はとても難しいバランスです。私はかつて、気になるあまり3日おきにフォローの電話をして「もう少し待ってください」と言われたことがあります。今思えば完全に逆効果でした。基本的には1週間〜10日程度の間隔を空けるのが無難です。
長期的な関係性維持のためのフォローアップ手法
記者との関係は一度の取材で終わりではありません。継続的な関係構築こそが、安定したメディア露出につながります。
効果的なフォローアップの方法
- 定期的な情報提供:四半期に一度程度、業界動向や自社の最新情報をまとめて送る
- 記者の記事への反応:記者の書いた記事(自社関連でなくても)に対して感想や情報を送る
- 季節の挨拶:年末年始や異動シーズンなどに簡単な挨拶メールを送る
- 専門的な情報交換の場づくり:少人数の勉強会や情報交換会を開催する
- 人間関係の構築:時には食事の場などでカジュアルな交流も大切(ただし過度な接待にならないよう注意)
私が成功した事例として、四半期ごとに「〇〇業界トレンドレポート」という1枚のPDFを作成し、関連記者に送っていました。自社PRに直結しない内容でも、業界の動きをコンパクトにまとめたものだったため「いつも参考にしています」という返信をいただくようになったんです。
テクノロジーを活用した記者関係管理
デジタル時代において、記者とのコミュニケーションもテクノロジーを活用して効率化できます。
私が活用している方法として:
- CRMツールでの記者情報管理:記者の興味分野、過去の取材履歴、連絡頻度などを記録
- Google Alertsの活用:記者の執筆記事を自動的に収集
- SNS分析ツール:記者のSNS投稿からトレンドや興味を把握
- メールスケジューリング:最適なタイミングでの情報提供
- オンライン記者会見の活用:地方や海外の記者も参加しやすい環境の提供
特にコロナ禍以降、オンラインでの記者会見や個別取材が一般的になりました。このようなデジタルシフトをうまく活用することで、より多くの記者との関係構築が可能になっています。
デジタル時代のメディア実績作り
デジタル化が進んだ現代のPR活動は、従来のアプローチだけでは十分な効果を発揮できなくなっています。私が広報担当として最初に仕事をしていた頃と比べると、メディアの形態も多様化し、情報の流れも格段に速くなりました。ここでは私自身の経験も交えながら、現代のデジタル環境で効果的にメディア実績を構築するための方法をお伝えします。
オンラインメディアへのアプローチ法
デジタルメディアへのアプローチは、紙媒体とは異なる戦略が必要です。以前PR会社で働いていた時、クライアント企業の記事が大手紙媒体には掲載されたのに、オンラインメディアではほとんど取り上げられないというケースがありました。原因を調査したところ、オンラインメディアに適した情報の「切り口」が足りなかったのです。
オンラインメディアは「読者の反応」を重視します。特にクリック数やシェア数が重要な指標となるため、見出しの付け方や内容の構成が紙媒体とは異なります。例えば、「○○業界で初めて」「△△%の効率改善を実現」など、数字や「初」「最大」といった言葉を入れることで記事になりやすくなります。
また、オンラインメディアごとの特性を理解することも大切です。IT系メディアなら技術的な側面を、ライフスタイル系メディアなら読者の生活への影響を強調するなど、媒体特性に合わせた情報提供が求められます。これは一朝一夕で身につく能力ではなく、私自身も何度も失敗を繰り返しながら学んできました。
実際に効果があった方法としては、各オンラインメディアの過去記事を10〜20本ほど読み込み、どのような切り口や表現が使われているかを分析することです。これにより、そのメディアの「好み」が見えてきますよ。
SNSを活用した情報発信とメディア露出の相乗効果
SNSとメディア露出は、うまく連携させることで大きな相乗効果を生み出します。私が担当していた中小企業では、最初はメディア露出もSNSフォロワーも少ない状態でした。そこで考えたのが、小さな露出でも最大限活用する「増幅戦略」です。
例えば、ある地方紙に小さく掲載された記事を自社のTwitterやFacebookで拡散し、「メディアに取り上げられました!」と投稿しました。すると、その投稿がフォロワーの間で共有され、結果的にその話題を見たWeb媒体の記者から取材依頼が来たのです。
このサイクルを意識的に作っていくことで、少ないメディア露出でも効果を最大化できます。具体的なステップとしては:
- メディア掲載が決まったら、掲載日に合わせてSNSの投稿内容を事前に準備する
- 掲載と同時に各SNSで拡散し、社員にも共有を促す
- 反応の良かった投稿内容を分析して次回に活かす
- メディア掲載記事のリンクを自社サイトやブログに掲載する
- 掲載メディアや記者にお礼と反響を伝える(次の取材につながりやすくなります)
特に5番目は意外と見落とされがちですが、記者との関係構築において非常に効果的です。「掲載ありがとうございました。おかげでSNSでも多くの反響をいただいています」と伝えることで、記者も自分の記事の価値を再確認でき、次回の取材につながりやすくなるんですよ。
デジタルPRツールの効果的な活用方法
デジタル時代のPR活動では、様々なツールを活用することで効率化と効果測定が可能になります。正直なところ、私も最初はこうしたツールの存在を知らず、手作業で多くの時間を浪費していました。ある時、PR会社の先輩から「そんなことを手動でやっているの?」と驚かれたことが、デジタルツールへの入り口となりました。
特に役立つデジタルPRツールとしては以下のようなものがあります:
1. メディアリレーション管理ツール
- Meltwater:記者情報の管理からプレスリリース配信、効果測定まで一貫して行えるツール
- Cision:海外メディアへのアプローチも視野に入れている場合に便利
- CoverageBook:メディア掲載実績をビジュアル的にまとめられるツール
これらのツールは決して安くはありませんが、大量の記者へのアプローチや実績の可視化において大いに役立ちます。予算が限られている場合は、Googleスプレッドシートで独自のデータベースを構築するのも一つの方法です。私も最初はそうやって始めました。
2. SNS管理・分析ツール
- Buffer:複数のSNSアカウントを一元管理し、投稿スケジュールを設定できるツール
- Hootsuite:SNS投稿の管理とモニタリングが統合されたプラットフォーム
- SocialDog:Twitter特化型の分析・運用ツールで、フォロワーの増減や反応を詳細に把握できる
これらを使うことで、メディア掲載の前後でSNSでの反応を計測し、どのような内容が拡散されやすいのかを分析できます。実際に私がクライアント企業でSocialDogを導入したところ、メディア露出と連動したツイートが平均RT数の3倍以上の拡散を見せるという明確なデータが取れたことがあります。
3. クリッピング・メディアモニタリングツール
- ミックトレンド:日本の主要メディアの記事をリアルタイムでモニタリングできるツール
- Google Alerts:特定のキーワードが含まれるWeb記事を自動通知してくれる無料ツール
- Mention:SNSやウェブ全体での自社や競合の言及をモニタリングできるツール
以前は新聞社から送られてくる切り抜きを手作業で管理していましたが、今ではこうしたツールを使うことで、自社に関する記事だけでなく、競合他社の動向や業界トレンドも効率的に把握できます。ただし、日本語対応が不十分なツールもありますので、導入前に十分な検討が必要です。
デジタル時代特有の注意点
デジタルならではの注意点もあります。特に気をつけたいのは情報の拡散スピードです。従来のメディアでは、掲載されてから反応が出るまでに時間的余裕がありましたが、オンラインでは数分単位で状況が変化します。
あるクライアント企業では、オンラインニュースに掲載された記事の一部に誤解を招く表現があり、SNSで急速に批判が広がったことがありました。企業側の対応が遅れたため、事態は更に悪化。後日、オフラインの記者会見で釈明しましたが、すでに負のイメージが定着してしまっていました。
このケースから学んだのは「デジタル時代のクライシス管理の重要性」です。具体的には:
- オンライン上での自社関連の言及を常時モニタリングする体制を整える
- 問題発生時の初動対応マニュアルを事前に準備しておく
- SNSでの対応権限と手順を明確化しておく(誰が、どのタイミングで、どう対応するか)
- 万が一の場合に備えて、誠意ある対応のテンプレートを用意しておく
こうした準備をしておくことで、デジタル時代特有のリスクに対処しやすくなります。ただ、失敗を恐れるあまり消極的になるのではなく、メリットを活かしながら慎重に取り組むことが大切です。
実践的なデジタルPR戦略の事例
最後に、実際に効果を上げたデジタルPR戦略の事例をご紹介します。とある中小企業のケースでは、以下のようなステップでメディア実績を積み上げていきました:
- 基盤構築フェーズ
- 自社サイトにプレスルームを設置(メディア向け素材をダウンロード可能に)
- 月1回のプレスリリース配信を開始
- 社長のTwitterアカウントを開設し、業界情報やコラム的な内容を発信
- 関係構築フェーズ
- オンラインメディアの記者5名を特定し、個別アプローチ
- LinkedIn経由で記者とつながり、情報交換を開始
- 業界イベントのオンラインセミナーに登壇し、その様子をSNSで発信
- 露出拡大フェーズ
- 独自調査結果をインフォグラフィックスにして公開(データジャーナリズム的なアプローチ)
- Webメディアに掲載された記事をもとに、より大きなメディアへアプローチ
- SNSでの反応データを添えて記者にアプローチすることで、「読者の興味がある」という点をアピール
この戦略を約6か月間実施した結果、メディア掲載数は前年比で3倍、Webサイトへの流入は2.5倍に増加したそうです。特に効果的だったのは「データの視覚化」と「SNSとの連携」でした。
デジタル時代のメディア実績構築においては、従来のPR手法の基本を押さえつつも、オンラインならではの特性を理解し、ツールを活用して効率化と効果測定を行うことが重要です。また、失敗を恐れずに小さく試して検証し、成功パターンを見つけるプロセスも大切です。
私自身、最初は手探り状態でデジタルPRに取り組んでいましたが、一つひとつの経験から学びながら少しずつ成果を上げてきました。皆さんも自社の特性に合わせた戦略を構築し、継続的に改善していくことで、効果的なメディア実績を積み上げていってくださいね。
メディア実績向上のための実践的アドバイス
最後に、私が実務経験から学んだ、メディア実績を継続的に向上させるためのいくつかの実践的なアドバイスをお伝えします。
- 「掲載されなかった」も重要な学びと捉える
メディアに取り上げられなかった場合でも、それは貴重なフィードバックです。なぜ記事にならなかったのか、プレスリリースの内容やタイミング、アプローチ方法などを振り返ってみましょう。私自身、掲載に至らなかったプレスリリースを分析することで、「ニュース性の明確化」や「時事的な話題との関連付け」の重要性を学びました。
- 記者との関係性を大切にする
メディア露出を継続的に獲得するためには、記者との良好な関係構築が欠かせません。掲載後のお礼はもちろん、記事になっていない場合でも情報提供に感謝の意を伝えるようにしましょう。私はかつて、記事にならなくても定期的に業界情報を提供し続けた記者から、後日「独占インタビュー」の機会をいただいたことがあります。 - 各メディアの特性に合わせた評価基準を持つ
全てのメディアを同じ基準で評価するのではなく、メディアごとの特性を理解して評価することが大切です。例えば、専門誌は発行部数は少なくても業界内での影響力が大きいケースがあります。私の経験では、小さな専門メディアでの掲載が業界キーパーソンの目に留まり、大きなビジネスチャンスにつながったことがありました。
- 定性的評価も重視する
数値化できる指標だけでなく、記事の質や企業イメージへの影響といった定性的な評価も重要です。例えば、「記事内での扱われ方」や「企業メッセージの伝わり方」などは、数字だけでは測れない価値があります。私は実務の中で、掲載量は少なくても経営者のコメントが丁寧に取り上げられた記事の方が、社内外からの反響が大きかったケースを何度も経験しています。
- 外部環境の変化に敏感になる
メディアの関心事は常に変化しています。社会情勢や時事ニュース、業界トレンドなどの変化を常にチェックし、PR戦略に反映させることが大切です。コロナ禍の際には、それまでの戦略を一新し、「リモートワークをサポートする」という切り口でアプローチしたことで、予想以上のメディア露出を獲得できた経験があります。
私自身、これらのアドバイスを実践することで、PR予算が限られた中小企業でも着実にメディア実績を積み上げてきました。最も大切なのは、一度きりの成功を目指すのではなく、継続的に評価・改善を行いながら、長期的な視点でメディアとの関係を育てていく姿勢だと思います。
メディア実績の評価と改善は、PR活動の成果を最大化するために欠かせないプロセスです。ぜひこれらのポイントを参考に、効果的なPDCAサイクルを回していただければと思います。
さいごに
メディア実績の構築は一朝一夕では成し遂げられるものではありません。私自身、PR担当として初めてプレスリリースを配信したときは、まったく反応がなくて途方に暮れたことを今でも鮮明に覚えています。何度も試行錯誤を重ねた結果、ようやく効果的なアプローチ方法が見えてきたんですよね。
特に印象的だったのは、ある中小企業のPR担当をサポートしていたときのこと。限られた予算の中で、どうやってメディアの注目を集めるかに悩んでいました。結局、地域密着型の独自性をアピールする戦略に切り替えたところ、地元メディアからの反応が格段に良くなったんです。このとき実感したのは、「大手企業の真似をするのではなく、自社ならではの強みを見つけることが大切」ということ。これは今でもクライアントにお伝えしている重要なポイントです。
メディア実績を積み上げる際に最も大切なのは、継続的な情報発信と関係構築です。何度かプレスリリースを出したくらいで諦めてしまうケースをよく見かけますが、ぜひ粘り強く続けてください。記者の方々も、定期的に質の高い情報を提供してくれる企業を徐々に信頼するようになります。わたしの経験では、6回目、7回目のプレスリリースで初めて記事化されることも珍しくありません。
また、デジタル時代においてもオフラインでの関係構築の重要性は変わりません。オンライン・オフラインをうまく組み合わせることで、より効果的なメディア実績を構築できます。例えば、オンラインでのプレスリリース配信と、対面での記者懇談会を組み合わせた戦略が功を奏したクライアントもいました。どちらか一方に偏るのではなく、バランスを取ることが成功への鍵です。
一方で、メディア露出の「質」にもこだわりたいところです。単に掲載数を増やすことだけを目標にすると、企業メッセージが希薄になってしまう危険性があります。掲載数と内容の質、この両方を意識したPR活動を心がけましょう。わたしたちが支援した企業でも、「出る杭は打たれる」を恐れて個性を押し殺したメッセージングでは、なかなか記事化されませんでした。思い切って企業の強い想いや独自の視点を前面に出したところ、記者の関心を引くことができたケースもあります。
メディア実績を評価する際も、単純な掲載数だけでなく、その内容や反響も含めて多角的に分析することが重要です。記事内容が自社のメッセージをきちんと伝えているか、対象読者に届いているか、具体的な反響(問い合わせ増加や認知度向上など)はあったかなど、多面的に評価しましょう。そのデータをもとに次のPR戦略を練ることで、螺旋状に実績を積み上げていくことができます。
PR担当者として日々奮闘されている皆さんには、ぜひ長期的な視点を持って取り組んでいただきたいと思います。一つひとつの活動が、やがて大きな実績となって企業価値向上に貢献します。難しく感じることも多いかもしれませんが、本記事で紹介した手法を参考に、自社に合ったメディア実績構築の方法を見つけ出してください。
最後に、PR活動に完璧はありません。常に変化する環境に適応しながら、試行錯誤を続けることが大切です。「失敗した」と思うPR施策からも必ず学びがあります。その経験を次に活かしていくことで、確実にメディア実績を積み上げていくことができるはずです。皆さんのPR活動が実を結ぶことを心より願っています。
今回の記事が少しでもお役に立てば幸いです。疑問点やさらに詳しく知りたいことがあれば、ぜひコメント欄でお聞かせください。また、次回は「PRクライシス対応の基本」についてお伝えする予定です。ご期待ください!